四国研修ツアー
2018年9月22日(土)~23日(日)
同伴者:八幡充治
四国には四国中央市に御施主さんが居られる事もあって時折来る機会があります。瀬戸大橋を渡ると2時間ほどで行き来できるので近い存在でしたが、今回は建築家の手島保氏が松山の郊外で材木店のレセプションルームをやっていると以前聞いていて、完成時に友人の建築家の神家昭雄氏と対談があったがタイミングが合わず行けなかった。高知で堀部安嗣設計の竹林寺納骨堂も見たいと思っていたし、梼原町の隈研吾の一連の作品も見たい、外泊も見たい。そしてやはり一泊するのなら宇和島に泊まり名店穂積亭にも又行きたいと思って、一泊二日で友人の八幡氏に声をかけて行く事になった。その道中を書いてみました。
2018年9月22日(土)
AM6:00 姫路八幡邸出発
↓ 285km ≒4h 途中休憩
ナビ誤認の為内子でUターン≒45kmロス
AM9:45三秋ホール見学
南外観
建っている場所が事務所の裏手に位置し、急傾斜にオーバーハングした状態である、台風21号で現石積箇所の土が流出した為石積を行ったようだ。これでガッチリ感が出た、石垣が苔むしてくるとおもしろそうである。
西下社長自ら案内頂き話を伺った、この施設は科ギャラリーであり会社の応接室であり、社交の場として時には月見の酒宴も行われているそうである。手島保氏の設計による作である。玄関扉はあるが本来は建物左の路地を通ってテラスに出て建物に入ることを考えたそうだ、テラスと土間(左官仕上げ)までは約600の段差がありそこにはここを造成する際に切った桜の角材が踏み段になっている。テラスと段があってそこから入ると塗土間になっているが板土間を予想したが意外であった。片開の玄関扉を開けて入ると気にならないがテラスとの段差からはそう感じる。
内部はテラスに掛かる梁と軒天の間が空いているので、そこから光が入る、また建物両端に窓があり程よい心地よい。天井がボルトになっていることも作用して誠に気持ち良い。
地窓方向
地窓よりテラス越に外景を望む
会社の主力建材の焼杉、OSBにアピトン合板などを使った自社設計のアイデア満載の倉庫群。
共栄木材 AM11:30出発
↓30km ≒45M
PM12:15大洲着 昼食・臥龍山荘見学
臥龍山荘入り口付近
臥龍院
清吹の間 書院窓
不老庵
不老庵入り口手水鉢 広間書院
入り口にある石の柱の灯篭。この石がこの建物の至る所に時には材木のように、また本来の石として使用されている。
かの黒川紀章も好んだ本当の数寄である、改めて施主の並々ならぬ思いを感じた。
臥龍山荘PM2:00出発
↓90km ≒1.5h
PM3:30 愛媛県南宇和郡愛南町外泊着
外泊り地区を港から望む
全景
城壁のような石積
近くの集落の三男坊主が移り住んで、コツコツと土地を開拓して出た石を積んで住宅地や段々畑を作ったそうだ。人の執着と言うか執念と言うかエネルギーの凄さを今に伝える。意匠の為の石積で無い力強さを感じる。
外泊PM4:10 出発
↓55km ≒1.30h
PM5:10 宇和島グランドホテル着
宇和島の町夕景 レールで作った橋
夕食:ほずみ亭
以前訪れた宇和島の名店「ほずみ亭」
再度の訪問だった、今回は前回見送ったカワハギの造りを食べる事が出来た。絶品!
鯛めしも。
このレベルの飲食店がこの播州にあるだろうか、あれば超繁盛店になることは間違いない。ロケーションは川に面した部屋もあり、写真のように水面に明かりが映って風情が漂う。暖簾の色は独特であるが印象に強く、あえて敷居を下げているようにも覗える。客数は100名は超えるであろう大箱を土曜日とはいえ大繁盛、注文が通っても待たせるでもなくスムーズに出てくることも素晴らしい。料理は旬の海産物を使った郷土色のあふれるものから一般的な料理まで幅広い。宇和島衰退感空気の中、このほずみ亭だけは別空間であった。また機会があれば訪れたい店であった。@5500円☆☆☆☆
2018年9月23日(日)
AM7:00 宇和島グランドホテル発
マクドナルド宇和島店で朝食
AM7;15出発
↓51km ≒1.10h
AM8:25梼原着 隈研吾の一連の作品(雲の上のホテル・雲の上のギャラリー・ユスハラマルシェ・梼原町庁舎と最新作梼原町図書館)
梼原町庁舎
庁舎ホール
この日庁舎前広場ではゆすはらグルメまつりが開催されていた。薩長土肥連合ですって、参加は高知・愛媛・鹿児島・山口・佐賀から、この山間の3400人の町で。驚きの人出だった、姫路でのイベント慣れしていたが久しぶりに熱いものを感じた。この庁舎は広場に開くように最初から計画されていた。この広場に面してゆすはら未来館、梼原千年ものがたり、ゆすはら座がある、こじんまりした凝縮した広場だった。
マルシェユスハラ 物産販売と雲の上のホテル別館となっている
物産店
実物は意外と良い
梼原の街並みと新築の図書館 街並みになっている。
雲の上の図書館と福祉系施設 12億と24億
図書館エントランス 外壁はALCに塗装 杉板の装飾の杉板 和風なのだ、根津美術館と繋がる。ローコストでも質感があって軽快である、行きたくなる図書館だ。
図書館内部 午前10時から午後9時まで開館
福祉施設
案内板 福祉施設ホール
最初はあまり期待せず視察を開始したが良いほうに裏切られた。3400人の町に絵に描いたような隈タウン、奇跡のような状況に驚いた。施設の職員がウキウキ仕事をしているように見える。この田舎に最先端の建築がボコボコあり、無電柱化しているエリアもあり空気感が良い。隈の設計が街に違和感なく溶け込んで輝いているこれが住民を刺激する。しかしそのせいで税金が高いと言った不満はあるのかはその実はわからないが。
実に隈の建築が5件、奇跡である。
雲の上のホテル
かなり草臥れが見える
ピュアーな手書き図面
雲の上のギャラリー
雲の上のホテルから温泉に行く渡り廊下で突き当りにEVがある。ここを歩く時に浮遊感を味わうのだろう。
これも木造?、安藤さんの木の殿堂と同じ。橋が長すぎて撓んだのか鉄骨のサポートが見える。
隈研吾はこの作品から少しして庁舎、その後マルシェ、図書館。歴史です。
PM9:35出発
ホテルに忘れ物取りの為往復 ≒110kmロス
↓43km ≒1h
PM12:10 昼食須崎市 すさき駅前食堂(なべ焼きラーメン)
夏でも鍋焼きラーメン 勉強になりました。
PM12:45出発
須崎道の駅経由
↓50km ≒1h
PM2:10 高知 竹林寺着
竹林寺
参道
納骨堂アプローチの石畳 少し上がってまた下がる。
足元灯
エントランス ひっそりと静かな佇まい、緊張感が漂う。
ポーチと待合空間
瞑想の水盤 内の外空間
奥の脇窓
外壁 RC混構造
堀部安嗣設計の竹林寺納骨堂である。RC+木造平屋の混構造、広大な竹林寺の敷地の中、本堂の手水場の左奥手にひっそりと佇む納骨堂。静寂そのものが形になったように感じる。先祖に会いに行って水盤の部屋で語らうことをストーリーにしたような建築である。
牧野富太郎記念館
デッキと屋根の退色に馴染みを感じるが、まだまだ新鮮。
輝きは衰えず、増すばかり。
PM4:00出発
↓265km ≒3.5h 途中晩御飯(川之江ほそ川)
PM8:00姫路着
総評
全行程1000km三秋ホール、外伯、梼原の隈研吾の作品、竹林寺、牧野富太郎記念館と廻った。どれもが強いインパクトと感じさせるものがあった。個々の件は前述したようなことであるが、押並べて言えることは「百聞は一見に如かず」次回は個々に時間をもう少し取って、もっと地元の人や施主や職員と話をしたいものである。全てには背景があるのだ、我々はそれを具現化するという事を改めて思う旅であった。
2018年9月24日 大西忠良